レンタカーの草分け
大口顧客は余裕を持って注文してくれるが、仕様がなかなか確定せず、納入の1週間前になってようやく決まるケースが増えている。
逆に、製品が高度化してきたため、部品や材料の納入リードタイムが長くなる傾向があり、半導体関連では半年を越えることも珍しくない。
これまでは標準仕様を想定して、その製品コードについて基準生産計画を立て、部品展開・所要量計算を行い資材を調達してきた。
だが、そのままではほかの仕様の製品が不足するので、短期の販売予測を適宜行い仕様別の生産量を計算し、部品の差異部分を計算し直し、補充している。
しかし、この方式では人の判断に依存する部分が多く、問題が起きたときには柔軟な対応によって何とか持ちこたえてきた観がある。
生産方式としての明確な体系を持っていない、と生産管理部門は意識しており、今回の「パワーアップ2000活動」の機会に自社に向く生産方式を確立したいと思っているとのことであった。
実際、親会社から派遣される役員が交代するたびに、「B社の生産管理は何をやっているのかさっぱり分からない」と苦笑されてきたとのことである。
生産システム・チームはパッケージを前提に生産管理方式を確立し、現在のシステムを再構築する任務を持って発足した。
「業務内容をグループの思いどおりに変更してよい」と十分な権限を与えられたので、メンバーは大きな責任を感じているようである。
コンサルタントは仕様別の部品補充計算し直しの仕組みの説明を受けながら、これは生産管理業務の範囲をかなり超えたところで問題が発生している。
と直感した。
根本的に解決するには広い範囲から問題を洗い出し、抜本的な対応策を考える必要がある。
しかし、生産システム・チームの任務は限定されているので、まず基本的な生産管理構想を社内にアナウンスしなければならない。
他との調整はその後に回さなければならない。
要求分析・要求定義作業パッケージに合わせて業務を改革せよと言われていたが、運悪く日本語化が遅れているとのことで、パッケージの説明書が導入業者から開示されていなかった。
したがって、パッケージを使って業務をどう変更するか、考える材料がない。
このままでは時間が無駄になってしまう。
他のチームも同じような事情のもとで活動しており、経理・会計チームのように、立派な中間報告がでている。
ところもある。
「日本語資料が届く前にユーザ側の要求を固めておくほうがよい」、との導入業者の意見に基づき、生産システム・チームは要求分析作業を開始した。
ところが、B社の生産方式が確立していないので、要求すべきことが決まらない。
何か柱になる方式を想定しなければ、要求内容がばらばらになり、矛盾するであろう。
どのような生産方式にでも対応できる抽象的な要求のままでは、パッケージに結びつくように具体化することは困難である。
これまで必要に応じてサブ・システムを個別に作ってきたので、情報システム部門は生産情報システム全体の体系には自信がなかった。
ユーザ部門も「我流ではいけない」とのトップの声に反省し、いざ要求となると、主体性を失い気味であった。
導入業者のほうもこの段階では「ユーザが主体性を持つことが重要」と、発言は少なかった。
コンサルタントが参加したのはこの段階からである。
パッケージの資料があれば、それをたたき台にして要求を短期間にまとめることができるであろう。
もし、要求分析して、それがパッケージに合わないと分かったとき、どう取り扱うか不安が残っていた。
これまでの話から、通常のMRPシステムではB社のニーズに合わないことは分かった。
もし、「パッケージに合わせて業務を改革する」のであれば、要求分析結果は反古になってしまうのであろうか。
不安材料は残っているが、とにかく事態を打開する必要がある。
幸か不幸か、パッケージの内容が分からないので、自社固有の生産方式を明らかにする時間が得られたと考え、作業を進めることにした。
生産方式が確立できれば、パッケージの日本語資料が出てきたとき、要求を的確に述べられるであろう「そのほうがパッケージに寄りすがるよりも責任が持てる」と生産システム・チーム内の意見が一致した。
新生産方式が姿を現す事業領域の分析からモデルを描き始めた。
しかし、作業を始めてすぐ、要求の根幹となる業務体系を考えるところで行き詰まった。
前にも述べたとおり、製造業の生産方式として有名な「T生産方式」や「MRPシステム」がそのまま適用できる事情ではなかった。
部品メーカの力が強く、T流のジャスト・イン・タイム納入には応じてもらえそうにない。
また、MRPの基準生産計画(MasterProductionSchedule)を立てるには、仕様が多すぎて需要予測が成り立たなかった。
それでも現有システムで会社は何とか動いている。
業務機能は同じでも、生産管理業務の運用方法が違っているようである。
機能が働くタイミング、すなわち、現場の連携の仕方に焦点を絞って見直すほかない。
コンサルタントはひとまず業務機能モデルを離れ、オブジェクト指向のデータモデルを描くことを提案した。
このモデルでは「もの」の状態を変化させる「活動の順序」と、組織部門間の「活動の連携」の様子を記述できるモデルを描きながら、原点に戻って生産方式を検討するようアドバイスした。
生産情報の中核になる「生産物」を中心にモデルを描いてみると、「P型(T生産方式やMRPシステムを超える新しいタイプ)」の生産方式像が浮かび上がった。
業務内容の詳細をここでは紹介できないが、「マス・カスタマイゼーション型[l]」の柔らかい生産方式になっている。
情報システムはこれに合わせるために、MRPシステムに独自の工夫を加えている。
それが裏目にでて、プログラムが複雑になり、変更が困難になっている部分もあることが分かった。
このユニークな生産方式がB社の強みであり、これをMRPシステムやT生産方式に変えることは問題が大きい。
製品構造の考え方が違い、お客様との取引関係も違う。
需要予測が成り立たないことを前提にしたB社方式は理論的にも優れている。
ただ、これまで自社の生産方式を意識してこなかったため、親会社から派遣される役員にはうまく説明できなかったにすぎない。
ただし、B社の生え抜き社員にとってマス・カスタマイゼーション型の方式は、これまでやってきた生産販売方式の体系化にすぎず、特別な改革は不要である。
むしろ、他の生産方式を参考にしたために中途半端な仕組みが業務手続や情報システムの中に散在しているので、それらを同じ方向に揃えれば十分である。
指導力が弱く、ゆるむC社のワーキング・グループ段階的アプローチを採ったC社ではコンサルタントの手を借りないで、ワーキンググループが独自の方法で作業を進めていた。
自分達の手で業務改革案の詳細化と情報システム案を作ることはC社にとって始めてではない。
むしろ、個別システムをこのような自主的な体制で構築してきた。
しかし、今回は全体構想が先にあり、それを詳細化することになると、チーム・メンバーにはいささか主体性を持ちかねる面があった。
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